早期治療の介入が早期改善の第一歩

 重病という診断は、誰だってくだされたくはありません。これは人情というものでしょう。「はじめに」でも述べましたが、「ぜんそく」という診断は重いのです。だから、来院される方々は、「気管支炎」という診断を期待されるのです。そして、「ぜんそく」は医療者側にとっても重くのしかかるため、「気管支炎」と診断するほうが気が楽なのです。

 当院に来院される方の中には、ぜんそくではないことを断言してほしい方が少なくありません。しかし、そのような方ではあっても、事実は事実としてぜんそくの診断をくだすと、なかなか受け入れてもらえません。

 不思議なことにこのようなケースは、子どもが「ぜんそく」である親や祖父母の方に多く見られます。ご自分の場合は、喘息であることを受け入れられるのに、どうしてわが子、わが孫になると受け入れられなくなるのでしょうか。このような方たちの特徴は、当然ながら頑固です。そして、比較的医学的知識を持たれています。

 が、あともう一歩、知識を深めていただければ、お子さんが苦しみから逃れられるのに、と思うと歯がゆくてなりません。

 お子さんがぜんそくであることを認められないというのは、いったいなぜなのでしょうか。わが子を愛するがゆえに認めないというのはわかります。しかし、それは親のエゴであり、大本をたどると、「間違った知識」に行き着きます。

 このような方々には、この言葉を贈りましょう。それは「アーリーインターベンション(early intervention)」です。もしかしたらご存知かもしれません。何しろ知識が豊富なのですから(皮肉ではありません)。

 簡単にいってしまえば、「早期治療介入」。早期に吸入ステロイド療法をしていると、改善が早いという結果が出ています。早期の治療、すなわち早期の受け入れがいかに重要であるか、早く気づいてほしいと願っています。もう一つ、キーワードを贈りましょう。

 「急がば回れ」。大切なお子さんにとって、遠回りのようで近道なのです。