テストされたぜんそく治療

 海外から帰国されたばかりというぜんそくのお子さんで、こんな例がありました。

 このお子さんのお母さんは、黙って子どもの診療を見ていました。そして、診療が終わってはじめて、「これからもお願いします」と言葉を発したのでした。その時のお母さんのお顔は、いかにも安心したという顔つきでした。

 後でわかったことですが、このお母さんは、私がどのような診療を行なっているのかをじっと観察していたのでした。つまり、テストされていたのです。そして「お願いします」は、まさしくテストの合格通知でした。

 欧米では、ステロイドはぜんそく治療で当たり前のように使われています。例えば、わが国の小児の吸入ステロイド使用率が最近やっと二十%になったのに対して、欧米ではなんと四十二パーセントという高い数値となっているのです。

 これは、何を意味しているのでしょうか。つまり、わが国では医療従事者でさえもステロイドに対して誤解しているということなのです。だから、ステロイドを処方しなかったり、正しく説明できないために受け入れてもらえないのです。この数字の格差は、たいへん残念な結果ですが、わが国の実態を浮き彫りにすることになりました。

 こうした大きな誤解は、ほとんどが、一般の開業医です。この方の場合も、帰国後は、いくつかの医療機関を転々とし、最後にたどりついたのが当院だったのだそうです。おそらく当院に初来院されたときは、大きな不信感と不安を抱いていたことでしょう。あのお母さんの無言の圧力は、今も忘れることはできません。

 さて、この小さな一件は、「ステロイドに対する誤解」という大きな問題を示すものとしてとらえていますが、ここでお願いがあります。それは、「吸入ステロイドをつかってください!」と声をあげていただきたいということです。

 この問題を解決する糸口の一端は、皆さんが握っているのかもしれないからです。